人は、何かを信じるたびに。何かを失ってしまうのかもしれない・・・。
それ故に、人は傷つく・・・。

Endress Sorrow

Act.5  友達


「ん・・・ここは・・・どこ?」
傷ついた少女が発した第一声はそれだった。
「ん?ここは俺の車だよ」
ささらが少女に言った、その目は穏やかでやさしさに満ち溢れていた。
「って!なんで私が・・・あの時殺してくれたらよかったのに・・・。」
少女は悲しみに溢れんばかりの表情だった・・・そして、自分の世界だけで終りを悟っていた。
「あのなぁ・・・ささらが人殺しなんてしたら・・・明日は科学物質の雨で人類皆死んでるぞ。
」 運転席で寝てたしげるが起きる。そしていつものようにタバコを咥え、火をつける。
「だって・・・私はあなたたちを殺そうとした敵なのよ・・・。なんで」
少女、またの名前を雛がつぶやく。
「あのなぁ・・・いつだって・・・どんな時だって・・・命は大事だからだ。」
ささらが言った。
「どーせなら・・・死んだほうがマシだった・・・。だって・・・私は創られたときから一人で
・・・そして誰かを殺すためしか生きれない。」 雛が悲しげに言った・・・。
「そしたら・・・俺たちと友達になってくれないか?」
ささらが言う、その言葉は優しさに満ち溢れていた。
「なんで?」
雛が問う。
「一人ぼっちって・・・さびしいから。それに・・・雛の新しい人生は・・・一人ぽっちにした
くないからだよ。」 ささらが言った。言った後には・・・ささらの首には雛の細い腕が回っていた。
「ありがとう・・・。」
雛は、小さな腕でささらを抱きしめながら・・ずっと言っていた。


「おーい・・・終虎が目を覚ましたぞー。」
しげるがささらに声をかけた。
「細流は?」
ささらが返す。
「あぁ・・・ずっとアイツにストラ(気を使っての治療)を送っていたからなぁ・・・。」
しげるは答える、隣では細流が寝息を立てて幸せそうに寝ていた。
「・・・ん?んー・・・。」
終虎が起きてきた。
「大丈夫か?」
ささらが声をかける、終虎はよみがえった意識の中でささらに問いかけた。
「成功・・・しましたか?」
「あぁ・・・」
ささらは、安堵の表情を浮かべた。


「んで・・・なんでコイツが居るわけ!?」
しげるがささらに問う。
「大丈夫だよ・・・彼女も・・やはり実験体だったらしい・・・。」
ささらが雛を見つめていった。
んで・・・あの会社はいったい何を実験しているんだろう?
終虎が素朴な疑問をぶつけた。
「私、ホムンクルスは・・・万華鏡社の錬金術計画によって生み出されたものなの。」
雛が真剣な目で答えた。
「錬金術計画とは・・・最初は古代の術、錬金術を現世に復活させようとしたものなの。
それがバイオテクノロジーによって錬金術を派生して・・・錬金工学として・・・新しいバイオ
テクノロジーの一種になった。 それで・・・私たちホムンクルスや細流さんのようなホムンクルスと人間の受精実験が始まった
の。」 雛は、彼らが思っていた疑問を先読みしたように全部いった。
「それで・・・彼らはそんなことで何をするわけさ・・・。」
しげるが質問を重ねる。
「それは・・・創られたホムンクルスを戦闘兵器として外国に売りさばくのです。
錬金工学で、私たちは常人の何十倍もの強化を施せるようになりました。
そうすると、国民を徴兵せずに戦争ができるってことになります。そして・・・対戦車兵器や殺
戮兵器として・・・。うっ・・・。」 雛の目には大粒の涙がこぼれていた・・・。
「雛ちゃん・・・」
ささらが心配そうな目で彼女を見つめていた。雛は、終虎のバラックの隅で一人泣き止むまで泣
いていた・・・。
「なんて連中だ・・・。」
しげるは、誰にもぶつけることができない怒りを発言にあらわした。
「まぁ・・・目的はひとつ・・・だよな」
ささらがしげるに問いかける。
「うん・・・そうだ・・・でも、まずは情報収集からだなぁ。」
しげるは冷静だった・・・。
「そうだな。」
ささらも、同意していた。
「しげる兄ぃ?」
細流が急にしげるに問いかけた。
「あのね・・・ここから先、雛ちゃんも連れていこうと思ってるの。」
「 別にかまわないけど?ささらだって同意してくれるし。」
「うん、俺も同意だ。」
二人は口々に同意の意思を伝える。
「僕も、連れて行ってくれませんか?」
終虎が、急にささらたちに言った。
「僕は・・・あの時無力でした。だから・・・少しでもあなたたちの役に立ちたいです。
それに・・・もうこの工場はつぶれた・・・私たちは自由になりました。だから・・・僕もあな
たたちと旅をしてみたいです。」 終虎は、自分の思いを伝えた。
「あぁ・・・いいぞ、旅は楽しいほうがいいしな・・・これから危険なこともあるけどみんなで
乗り切ろう。」 しげるは、快諾した。

「さて・・・出発しましょうか。」
細流が荷物を車に詰め込んだ。新しい仲間やしげるたちも乗り込む。

この先・・・どんな危険があるかはわからないけど。仲間と共に乗り切るであろう・・・。


END


+あとがき+
さて、駆け足で物語が進んでいくこの話もついに5話になりましたねー。
そろそろ、この小説の裏話とか載せていきたいって思っていますねぇ・・・。

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